8日目から13日目までは、物件購入前に必ず計算しなければならない収益性について解説しました。
また、投資の目的として重要視しているキャッシュフローについても述べてきました。
そこで、私が投資をするかどうかの判断の一つとして採用しているIRR(Internal Rate of Return 内部収益率)の求め方ついて、さらに詳しく解説したいと思います。
IRR(内部収益率)を計算してみよう
ネットで調べると、いろいろ難しそうに感じますが、まずは計算してみましょう。エクセルを使うととても簡単に計算できます。
例題
120万円投資します。翌月からの収入は毎月2万2千円となり、同じ金額で60ヶ月続きます。60ヶ月後の投資対象の価値は0となります。その場合のIRRを求めてください。
例題のケースを整理すると、
- イニシャルコスト 120万円
- 投資期間 60ヶ月(5年)
- リターン 2万2千円 毎月 合計132万円
- 残存価値 0円
となります。
キャッシュフローをエクセルで表現します。ここで、2019年12月に投資して、2020年1月から2024年12月までリターンを受け取ったと仮定すると、下表のようになります。
A | B | |
2 | 2019年12月 | -120 |
3 | 2020年1月 | 2.2 |
4 | 2020年2月 | 2.2 |
5 | 2020年3月 | 2.2 |
6 | 2020年4月 | 2.2 |
7 | 2020年5月 | 2.2 |
8 | 2020年6月 | 2.2 |
9 | 2020年7月 | 2.2 |
: | : | |
: | : | |
57 | 2024年8月 | 2.2 |
58 | 2024年9月 | 2.2 |
59 | 2024年10月 | 2.2 |
60 | 2024年11月 | 2.2 |
61 | 2024年12月 | 2.2 |
受け取り総額は、2.2万円×60ヶ月=132万円です。
ここで、IRRを求めるIRR関数が登場ですが、注意が必要です。
IRR関数は年単位のキャッシュフローの関数なんです。
このまま、IRR関数を使って子のキャッシュフローを計算すると、
IRR(B2:B61,0) ⇒ 0.32%
という結果になります。
60ヶ月でリターン総額が132万円なので、この数字はおかしいですね。
実は、このように年単位ではないケースでは、
XIRR関数を使います。
このXIRR関数は、具体的な日にちで計算をしてくれます。
この例題の場合、
XIRR(B2:B61,A2:A61,0) ⇒ 3.88%
となります。今回は、月までしか指定していませんので、計算上は毎月1日で計算していることになりますが、より具体的な日にちを設定することも可能です。今回の例題では入金のみですが、例えば、
- 入金 毎月10日
- 出金 毎月20日
- 税金 9月15日
とか、任意の日にちを考慮に入れた計算が可能となります。
年単位 月単位
ヶ月数 | 5年 |
IRR(IRR関数) | 3.26% |
2019年 | -120 |
2020年 | 26.4 |
2021年 | 26.4 |
2022年 | 26.4 |
2023年 | 26.4 |
2024年 | 26.4 |
さきほどIRR関数は年単位であるとお伝えしました。では、例題を年単位で計算してみましょう。
3.26%
となり、毎月ベースよりも、▲0.66%低い結果となりました。原因は、収入となったタイミングの考え方だと推察されます。
どちらにしても、XIRR関数の方がより詳細なキャッシュフローから算出できるので、真の数値だと考えられます。
期間の影響
IRR関数の場合、XIRR関数と誤差が発生することがわかりました。
では、キャッシュフローの期間(データの数)によって、どの程度XIRR関数の結果とズレが発生するのでしょうか。
例題を以下の条件で3種類に増やします。
- リターン総額は132万円で同額
- 期間は、1年、2年、5年の3種類
これで先ほどと同じ計算をしてみます。
ヶ月数 | 12ヶ月 | 24ヶ月 | 60ヶ月 |
IRR(IRR関数) | 10.00% | 6.60% | 3.26% |
IRR(XIRR関数) | 19.46% | 9.71% | 3.88% |
期間が短くなると2倍近くもずれてしまいますね。短期間の収益性判断にIRR関数は使えないことがわかりました。
XIRR関数 ≒ IRR関数×12
さきほど、XIRR関数は日付で計算してくれることをお伝えしました。より正確にIRRを求めようとするのであれば、入金と出金の各項目を日付まで管理する必要があります。
でも、ここまでの正確さは必要なのでしょうか。不動産投資はデイトレードのような短期で売買するような投資ではありません。そのような短期投資はもはや投資とは呼ばす、投機と呼ぶ類のものでしょう。
一方で賃貸は月単位でキャッシュフローを管理するのが便利ですので、年単位のIRR関数は使いにくい関数となってしまいます。
そこで私が採用している計算方法を紹介します。
月単位のキャッシュフローとIRR関数で精度よくIRRを求められる方法です。
XIRR関数 ≒ IRR関数×12
では、どのくらいの精度で計算できるでしょうか。
上の式の通り、月単位のキャッシュフローからIRR関数を用いて計算した結果を12倍したものとXIRR関数を比較してみました。
ヶ月数 | 12ヶ月 | 24ヶ月 | 60ヶ月 |
IRR(IRR関数×12) | 17.97% | 9.32% | 3.82% |
IRR(XIRR関数) | 19.46% | 9.71% | 3.88% |
IRR関数の結果とXIRR関数の結果が近似しています。この傾向は、ヶ月数(データ数)が増えれば増えるほど高まります。
つまり、10年(120ヶ月)、15年(180ヶ月)、30年(480ヶ月)ともなると、誤差は極僅かとなります。毎月のキャッシュフローの金額の変化によっては誤差が多少増加することもあるようですが、精度としては問題ないと言える範囲です。
※計算結果については自己責任でお願いします。
これによって、毎月の収支のみを管理することでIRR(内部収益率)の計算ができるようになりました。
今日のまとめ
計算をシビアに行っても、労力掛けた割にはメリットが少ないこともあります。不動産投資は細かいことも長期の視点も両方が重要ですが、計算も同じバランスが必要なのかもしれませんね。自分への戒めも含めてです。(笑)
[…] 確かにIRR的にも短期でリターンを得た方が良い数字にはなりますね。※32日目のIRRの計算方法が参考となります。 […]
[…] となります。IRRの計算方法については、こちらを参考にしてください。 […]